「ロザライン?神父様、違います。わたしはその名前をとうに忘れてしまいました。」
シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』の主人公ロミオが、「ジュリエットと結婚したい!」とロレンス神父に打ち明けるシーン。この場面で触れられる「ロザライン」という名前の女性を知っていますか?
ロザラインは、キャピュレット家の令嬢で、ロミオがジュリエットに出会う前に、一方的に好意を寄せていた娘であるという描写が原作の中に登場します。
恋愛相談を受けてきたロレンス神父も、「あんなに恋い焦がれていたのに!?」と驚くほど、あっさりとロザラインからジュリエットに心変わりしたロミオ。移り気な若き恋の情熱を表していて、少しコミカルにも感じる原作のシーンです。
映画『ロザライン』10月14日(金)よりディズニープラスで配信スタート
ディズニープラスのStarで配信中の映画『ロザライン』は、シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』には、名前だけしか登場しない人物、キャピュレット家のロザラインを主人公にした恋愛コメディです。筆者は、ロザラインの視点から『ロミオとジュリエット』の裏側を描くというストーリーに興味を惹かれました。
ロザラインは、ロミオからの猛烈なアプローチを受けて、「恋人」として甘い言葉を捧げられることに満更でもない気分になっていました。ところが、原作にも登場するキャピュレット家の仮面舞踏会に出席できなくなったことで、ロミオとジュリエットの運命的な出会のきっかけを作ってしまうことになります。
しかも、ロミオから囁かれていた求愛の言葉とまったく同じセリフを、いとこのジュリエットに情熱的に告白しているロミオの姿を目撃してしまい、危機感を感じます。ジュリエットに出会って以来、彼女に夢中になってしまったロミオをもう一度振り向かせるため、“元カノ”のロザラインが、2人の恋を阻止しようとする姿が、コミカルに描かれていきます。
恋愛なのか、恋に憧れているだけなのか?
原作の悲劇性をコメディ化することに不安を感じつつ鑑賞しましたが、テーマのひとつでもある「若き恋の瞬間性」をクローズアップして描くことで、現在進行形で恋愛中の若者世代には共感できるポイントが多い恋愛ストーリーになっていました。
「これは、本物の恋なの?それとも、恋に憧れているだけ?」という判断は、恋愛経験が少ないティーンエイジャーには、なかなか難しいことなのかもしれません。
実際に恋人と呼べる人ができて、恋愛を体験したからこそ、「この人のこと本当に好きなのかな?」という自分の本心に気づいてしまうこともあります。さらに、本心に気づいた上で、恋人を手放したくないような執着心というのもある。そういった若い日々の恋愛を、シェイクスピアの世界を借りつつ、現代的にテンポよく描いていました。
「若き日の恋愛かぁ……。」と懐かしさを感じる大人世代には、ノスタルジーを感じさせつつ、シェイクスピアの原作に登場する人物の配役の妙を楽しめるストーリーにもなっています。
問題なのは、ラストですよね。『ロミオとジュリエット』の有名すぎるラストを、コメディ作品としてどうやって作り変えるのか?ぜひ、ディズニープラスでチェックしてください!
『ロザライン』予告編
2022年10月14日(金)からDisney+(ディズニープラス)で配信中。
©2022 20th Century Studios
キャスト
ロザライン役:ケイトリン・デヴァー『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』
ロミオ役:カイル・アレン『ウエスト・サイド・ストーリー』『アメリカン・ホラー・ストーリー:黙示録』
ジュリエット役:イザベラ・モナー『トランスフォーマー/最後の騎士王』
ロザラインのお世話役:ミニー・ドライヴァー『グッドウィル・ハンティング/旅立ち』
スタッフ
プロデューサー:ダン・コーエン&ショーン・レヴィ『ストレンジャー・シングス未知の世界』『フリー・ガイ』
脚本:スコット・ノイスタッター&マイケル・H・ウェバー『(500)日のサマー』『いま、輝くときに』
監督:カレン・メイン『ストレンジ・フィーリング アリスのエッチな青春白書』