【速報】第39回東京国際映画祭(2026)受賞結果一覧|東京グランプリは『妹兄とマンホールの蓋』

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2026年10月26日(月)から11月4日(水)まで、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区を中心に開催された第39回東京国際映画祭。世界112の国と地域から集まった204作品が上映され、最終日にはクロージングセレモニーで各賞が発表されました。※画像は後ほどアップいたします。

本記事では、東京グランプリ/東京都知事賞をはじめとするコンペティション部門、アジアの未来部門、今年からコンペティション化されたNippon Cinema Now部門、アジア学生映画コンファレンス部門の受賞結果を紹介します。あわせて、黒澤明賞、東京国際映画祭 エシカル・フィルム賞、新設された川喜多かしこ映画文化賞の受賞者・受賞作品と、授賞式で語られたコメントをまとめました。

第39回東京国際映画祭(2026)受賞結果一覧

この記事では、コンペティション部門をはじめ、アジアの未来、Nippon Cinema Now、アジア学生映画コンファレンスの各賞と、黒澤明賞、エシカル・フィルム賞などの受賞結果をご紹介します。

コンペティション部門 賞受賞作品・受賞者

コンペティション部門は、2026年1月以降に完成した長編映画を対象とする、東京国際映画祭の中心的な部門です。第39回では、112の国と地域から1,892本の応募があり、その中から15作品が選出されました。

ヨーロッパ、アジア、南米など、製作国・地域は31か国・地域に及び、国際共同製作による作品も数多く並びました。日本からは、池田暁監督の『妖怪、化物をひろう』、山本英監督の『過怠』、三島有紀子監督の『男ともだち』の3作品が出品されています。

審査委員長を務めたのは、脚本家・映画監督・プロデューサーのロルフ・デ・ヒーア。審査委員には、プロデューサーのアレックス・ローとオ・ジョンワン、俳優の渡辺真起子、カラリストのヨブ・ムーアが名を連ねました。5名による審査を経て、東京グランプリ/東京都知事賞をはじめとする各賞が決定しました。

東京グランプリ/東京都知事賞:『妹兄とマンホールの蓋』

東京グランプリ/東京都知事賞に輝いたのは、ミルチョ・マンチェフスキ監督の『妹兄とマンホールの蓋』です。

北マケドニアの首都スコピエの周縁部で、マンホールの蓋や銅製の胸像を盗み、スクラップとして売りながら暮らす兄妹を描いた物語。ある事故をきっかけに社会の底辺をさまようことになった二人の姿を通して、貧富の差や機能不全に陥った社会、そこからこぼれ落ちた人々の尊厳を、ユーモアと寓話性を交えて映し出します。

『妹兄とマンホールの蓋』

審査委員特別賞『魔法の星図』スン・シュン監督

中国出身のアーティスト、スン・シュン監督が約10年をかけて完成させた長編アニメーションです。炭鉱によって発展した架空の帝国を舞台に、専制支配のもとで失われた人々の記憶を呼び起こす魔術師と、彼から不思議な書物を託された孤児の少年を描きます。

スン・シュン「コンペティション部門に選出されたことも喜んでいたのですが、受賞することができてさらに喜んでいいます。10年かけて制作したアニメーションです。今後もクリエイティブを活かして、制作していきたいと思っています」

『魔法の星図』

優秀秀監督賞:リサンドロ・アロンソ『ふたつの自由』

人里離れた森で、自給自足の生活を送るミサエル。精神療養施設の閉鎖により、入所していた姉ミカエラを引き取ることになり、孤独で自由だった生活が変わり始めます。

公的支援の縮小や精神医療が抱える問題を背景に、異なる環境で暮らしてきた姉弟が、ともに過ごす時間の中で見つけていく二つの自由を描いた作品です。

『ふたつの自由』

リサンドロ・アロンソ「このような評価をいただき嬉しく思っています。会場に足を運んでくださったみなさんに感謝申し上げます。今回は、会場に行けませんでしたが、次の作品では足を運べればと思います。」

最優秀女優賞:フー・リン『ふたりを結ぶ夜』

両親が詐欺容疑で逮捕され、将来の目標を失った上海の大学生グオフォン。ある夜、学生寮の管理人として働く年上の女性アンに介抱されたことから、二人は年齢差を超えて惹かれ合います。

アンもまた、娘の死をきっかけに家庭が崩壊した過去を抱えていました。それぞれに深い傷を負った二人の孤独と、痛みを和らげるような関係を描いた作品です。フー・リンはアンを演じました。

『ふたりを結ぶ夜』

最優秀男優賞:成田 凌『男ともだち』

直木賞作家・千早茜の同名小説を、三島有紀子監督が映画化。京都で暮らす29歳のイラストレーター・神名は、描きたいものを見失い、不毛な恋愛に逃げる日々を送っています。

そんな神名のもとに、昔から自分を深く理解してくれた“男ともだち”ハセオから、7年ぶりに電話がかかってきます。京都、富山、広島で過ごす三つの夜を通して、二人の関係と神名の人生が動き出します。成田凌はハセオを演じました。

成田 凌欠席のため三島有紀子監督のコメント『この光景を成田さんに見せたい。成田さんは、現場を見て、監督のこともずっと見てくれました。雪が降ってほしいシーンで成田さんが雪降れと言ったら本当に降ったんです。彼は、そんなふうに現場を盛り上げてくれる人です」

『男ともだち』

最優秀芸術貢献賞」『今日が終わるまで』イェレナ・マクシモヴィッチ監督

2024年にセルビアのノヴィサドで起きた鉄道駅崩落事故をきっかけに、政府への抗議運動が激化する社会を背景とした作品です。

学生によるボイコット運動に参加する左派の活動家レナと、政府を支持する青年ステファン。政治的には対極にある二人が、家族や社会から自由になりたいという共通の思いから出会い、逃避行を続けます。鮮烈な映像と音響の中に、青春映画、メロドラマ、犯罪映画の要素が交錯するロードムービーです。

『今日が終わるまで』』

観客賞:『ヘイゼル85』テオドラ・アナ・ミハイ監督

1985年、ブリュッセルのヘイゼル・スタジアムで発生し、39人が亡くなった「ヘイゼルの悲劇」を題材にした作品です。

市長の娘や、混乱の中で家族を捜すイタリア人記者など、さまざまな立場の人物を通して惨事に至るまでの経緯を描写。民族間の対立や集団心理の恐ろしさ、行政の責任、報道の倫理といった問題を浮かび上がらせます。劇映画の映像に当時の記録映像を織り交ぜている点も特徴です。

テオドラ・アナ・ミハイ監督「予想しておりませんでした。観客の皆様ありがとうございます。」

『ヘイゼル85』

アジアの未来部門

アジアの未来部門は、日本・中東を含むアジアの新鋭監督を対象とし、長編3作目までの作品を世界に先駆けて紹介するコンペティション部門です。第39回では、世界初上映となる8作品を含む10作品が選出されました。審査を務めたのは、プロデューサーの水野詠子、映画監督の藤元明緒、プロデューサーのユリア・エフィナ・バラの3名。

アジアの未来 作品賞:『シェリフェ』タレク・ダウド監督

夫に先立たれ、気落ちした日々を送っていたシェリフェ。ふとしたきっかけで若者たちの詩の朗読会に参加し、人前で詩を読むうちに生きる力を取り戻していきます。新しい友人も増え、以前とは見違えるほど活動的になりますが、息子たちは母親の変化に戸惑い、家へ連れ戻そうとします。

いくつになっても自分の人生を楽しもうとする女性と、彼女を取り巻く家族の姿を、ユーモアと温かさを交えて描いたファミリーコメディです。アフガニスタン生まれのタレク・ダウド監督が、トルコを舞台に、自身の祖母や家族の記憶を反映して作り上げました。監督にとって長編第2作となります。

タレク・ダウド監督「人生で初めての受賞です。予想しておりませんでした。」

シェリフェ

Nippon Cinema Now部門

Nippon Cinema Now部門は、日本映画の新作から、特に海外へ紹介すべき作品を選出する部門です。新鋭監督のみずみずしい作品から、ドキュメンタリー、実績ある映画作家の新作まで、現在の日本映画を映し出す多彩な作品を上映します。

第39回からは、日本映画と映画人の世界進出を後押しするため、新たにコンペティション化され、8作品が選出されました。審査を務めたのは、フランスの映画評論家マチュー・マシュレ、ミリアゴンスタジオ執行役員の村田千恵子、ウーディネ・ファーイースト映画祭代表のサブリナ・バラチェッティの3名。「Nippon Cinema Now 作品賞」と「Nippon Cinema Now 審査委員賞」が選出されました。

Nippon Cinema Now 作品賞:『シルバー・エクスプレス』田中未来

他者に恋愛感情を抱いたことがなく、周囲から浮いているような孤独を感じてきた智絵里。ある日、自分と同じように恋愛感情を抱かない男性・翔也と出会い、「自分たちは一人ではなかった」と喜び合います。しかし、よく似ているように見えた二人の間には、やがて決定的な違いが浮かび上がります。

恋愛感情を抱かないアロマンティックの女性を主人公に、自分とは異なる価値観やセクシュアリティを持つ他者を理解することの難しさと大切さを描いた作品です。短編『ジンジャー・ボーイ』で第78回カンヌ国際映画祭ラ・シネフ部門に入賞した田中未来監督にとって、初の長編映画となります。主演は、本作が映画初主演となる岡本ゆい。栗原颯人が翔也を演じています。

田中未来監督「名誉ある賞をいただき、ありがとうございます。現代を生きる若者の葛藤を描いており、このような賞をいただけることを名誉に思います。また、この場に戻ってこられるように頑張ります」

『シルバー・エクスプレス』

Nippon Cinema Now 審査委員賞:『いえないふたり』まつむらしんご監督

児童劇団で出会った真琴と香純は、家族合同のキャンプで起きたある出来事をきっかけに疎遠になります。それから6年後、高校の演劇部で再会した二人は、互いに言葉にできない思いを抱えたまま、再び同じ舞台に立つことになります。

これまで口にできなかった感情を、演劇というフィクションを通して表現していく二人。止まっていた友情と二つの家族の時間が、少しずつ動き始めます。川島鈴遥と倉沢杏菜が、複雑な過去を抱える少女たちを演じた青春ドラマです。

まつむらしんご監督「関係が途絶えてしまった家族がシンプルな作品。出演してくれたすべての俳優に捧げる俳優賞だと思っています。」

『いえないふたり』

アジア学生映画コンファレンス部門

アジア学生映画コンファレンス部門は、アジア各国の映画学校が推薦した、60分未満の実写・アニメーション作品を対象とする学生映画のコンペティション部門です。2025年の第38回東京国際映画祭で新設され、第39回では、すでに海外の映画祭で受賞した作品を含む15作品が選出され、3つのプログラムに分けて上映されました。

審査を務めたのは、ベルリン国際映画祭フォーラム部門ディレクターのバルバラ・ヴルム、映画監督のテオドラ・アナ・ミハイ、ドキュメンタリー監督の山崎エマの3名。「アジア学生映画コンファレンス 作品賞」と、最大2作品に贈られる「審査委員特別賞」が選出されました。

アジア学生映画コンファレンス 作品賞:『太陽の下を駆け抜けて(Running Wild in the Sun)』グエン・ヴ―・ヘン・チー監督

 

審査委員特別賞:「彼女のすべて(All of Her)」キム・ナムヒョン

キム・ナムヒョン監督のコメント

「今この瞬間を信じて、これからもっといい映画を作ってまいります。本当にありがとうございました。」

審査委員特別賞:『すべて順調(Everything’s Peachy)』ナ・イーチェン監督

 

黒澤明賞

黒澤明賞は、世界の映画界に貢献した映画人や、映画界の未来を託したい映画人に贈られる賞です。黒澤明監督の功績を後世へ伝え、新たな才能を送り出したいという願いから、2022年に14年ぶりに復活しました。

第39回では、山田洋次監督、李相日監督、撮影監督の芦澤明子、東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの市山尚三による選考を経て、呉美保監督とモハマド・ラスロフ監督が受賞。11月3日に東京・帝国ホテルで授賞式が行われました。

受賞者:呉美保監督

呉美保監督は、2006年の『酒井家のしあわせ』で長編映画監督としてデビュー。『そこのみにて光輝く』では、モントリオール世界映画祭の最優秀監督賞をはじめ、国内外で数多くの映画賞を受賞しました。

選考では、社会の片隅に生きる人々を善悪で割り切ることなく、多面的に見つめてきた姿勢が評価されました。近年の『きみはいい子』『ぼくが生きてる、ふたつの世界』『ふつうの子ども』における、子どもたちをありのままに描く演出も、授賞理由に挙げられています。

受賞者:モハマド・ラスロフ監督

イラン出身のモハマド・ラスロフ監督は、政府による検閲や禁固判決、映画製作の禁止処分などに直面しながら、権威主義的な社会における人権の抑圧や、個人の責任と倫理的な選択を描き続けてきました。

『悪は存在せず』はベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞。『聖なるイチジクの種』はカンヌ国際映画祭で審査委員特別賞を受賞し、アカデミー賞国際長編映画賞にもノミネートされました。抑圧する側の人間も一人の市民として捉える人間的な視点と、さまざまな圧力に屈することなく創作を続けてきた姿勢が評価されています。

東京国際映画祭 エシカル・フィルム賞

東京国際映画祭 エシカル・フィルム賞は、映画を通して、環境、貧困、差別といった社会課題への意識や、多様性への理解を広げることを目的に、住友商事の協力によって2023年に創設されました。

第39回では、東京国際映画祭に出品された新作から、エシカルの理念に合う3作品を選出。俳優の磯村勇斗を審査委員長に、東京国際映画祭の「学生応援団」から選ばれた大学生3名を加えた審査委員会が選考を行いました。

受賞作品:『夢から覚めることはそうない』(イザベル・シュテーバー監督)

第39回のエシカル・フィルム賞には、イザベル・シュテーバー監督の『夢から覚めることはそうない』が選ばれました。

本作の舞台は、ロシアによるウクライナ侵攻が始まる前後のキーウです。国外への避難を試みるものの、書類上の性別を理由に出国できないトランスジェンダー男性のオレグと、恋人のオーリャを通して、戦争下における尊厳やアイデンティティ、自由について問いかけます。

審査では、戦争、ジェンダー、差別、言語など、現代社会が抱える複数の問題を深く描いている点が評価されました。磯村勇斗審査委員長は、「戦争中のウクライナで生きる2人の呼吸が、痛いほどスクリーンから伝わってきたと。自分が同じ状況に置かれたとき、生き方やアイデンティティを守れるのかを考えさせられる作品だ」と述べています。

授賞式に参加できなかったイザベル・シュテーバー監督は、ビデオメッセージを寄せました。監督は、クィアという言葉がLGBTQ+の人々だけでなく、社会によって規範化されていないものすべてを指すと説明。自由を得るために自由を諦めることがあり得るのかと問いかけ、受賞への感謝を伝えました。

川喜多かしこ映画文化賞

川喜多かしこ映画文化賞は、日本と海外の映画文化の発展に貢献した女性をたたえる功労賞です。欧州の名作を日本へ紹介し、映画の保存・継承にも尽力した川喜多かしこの功績を未来へ受け継ぐため、第39回東京国際映画祭で新設されました。

女性による選考委員会が受賞者を選び、ウィメンズ・エンパワーメント部門の企画として贈賞式を実施。第1回の受賞者には、映画評論家の秦早穗子が選ばれました。

受賞者:秦早穗子

秦早穗子は、1957年に雑誌社の特派員としてフランスへ渡り、帰国後に映画輸入会社「新外映」へ入社。買い付け担当として再びフランスへ渡り、ジャック・タチ監督の『ぼくの伯父さん』、ジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』、ルネ・クレマン監督の『太陽がいっぱい』など、数々の名作を日本へ紹介しました。

その後もジャーナリストや映画評論家として活動を続け、長年にわたり日本とフランスをはじめとする世界の映画文化交流に貢献してきたことが評価されました。2026.tiff-jp.net

秦は当初、第1回受賞者に選ばれたことを聞き、川喜多かしこは自分にとって遠い「レジェンド」であり、かつて映画の買い付けでは競い合う立場でもあったことから、辞退を考えたと明かしました。

しかし、女性が映画の仕事に携わることへ厳しい目が向けられていた1950年代を振り返り、川喜多からかつてかけられた「女として、忍耐の場、いろいろありますものね」という言葉を伝えるため、受賞を決意したと語っています。

贈賞式では、映画をさまざまな社会や文化の問題に出会える「道草学校」と表現。映画を通して学ぶことは、性別を超えた人間の生き方の一つであり、世界の分断が深まる今だからこそ、この賞には意義があると述べました。