「映画とわたし」プロジェクトを初めます
特別な映画との出会いは、鑑賞者の人生に影響を与えていくものです。「なにみるマガジン」では、映画と人生の関係性を追求していく新しい試みを始めます!
映画好きを名乗る人たちが、自分のおすすめする映画を紹介するシリーズ企画です。
おすすめの映画を選ぶ際の選択は、映画に対する個人的な経験や感情を反映しており、その人ならではの物語が込められています。
この企画を通して、映画がどのように人々の心に影響を与え、彼らの人生に色を添えているかを探求したいと思いっています。
第1回目に映画を紹介してくださるのは、ITコンサルタントの神 靖志さんです。神さんは、映画を月に約10回鑑賞する熱心な映画愛好家です。
実はこの企画は、神さんの「なにみるマガジンに映画紹介の記事を掲載してほしい!」というご要望から生まれました。
では、神さんの「映画とわたし」の関係性をお聞きしていきましょう。
神 靖志さんのプロフィール
【お名前】神 靖志
【職業】ITコンサルタント
【居住地】札幌
【映画以外の趣味や興味】写真、旅行(特にタイ)
【初めて見た映画】『白蛇伝』(1958)
【ひとこと】年齢68歳 昭和をリアルに経験
【映画とわたし】ITコンサルタントの神 靖志さん
神靖志さんインタビュー
みねまる:神さんの映画との出会いを教えてください。
神靖志:私の映画との最初の出会いは「白蛇伝」でした。記憶にある一番古い映画ですが、昔のことなので、初めてかどうかはちょっと怪しいです。小学生のとき学校の体育館で授業の一部として上映されました。まだ、カラーテレビが普及し初めのころで、スクリーンに映し出されたカラーの大画面の美しさは衝撃的でした。ストーリーは覚えていませんが、記憶に残った映画です。
みねまる:神さんの映画鑑賞のスタイルについて教えてください。
神靖志:月に10本ほどの映画を自宅で一人で鑑賞することが多いです。自宅の6.1chホームシアターが私のお気に入りの場所です。
みねまる:6.1chホームシアターというのは?
神靖志:15年位前に購入したYAMAHAの6.1chホームシアターシステムのことです。購入当初はフロントに大型のメインスピーカー(右、中、左)3chとリアに小型の3chのスピーカー(右、中、左)に、バス専用スピーカ0.1chの計6.1chのスピーカーとそれらを駆動するアンプ、それに120インチのプロジェクターで、前後左右から音が飛んできて大画面の迫力ある映画が見れました。今は、プロジェクターは75インチの液晶TVになっています。それでも、合計の価格は40万円くらいで、3年分割で購入しました。
みねまる:映画館で映画を鑑賞したときの特別なエピソードがあれば教えてください
神靖志:昔は24時間放映していた映画館があって、帰りの電車が無くなって深夜に朝まで寝てようと「大地震」という映画を見ていたらセンサラウンドシステムが館内を地響きをたてて鳴り響き、まったく眠れなかった思い出があります。
みねまる:今回おすすめする映画について教えてください。
神靖志:まず『野菊の如き君なりき』(1960)は、封建時代の日本を背景にした青年と少女の物語です。彼らの純粋な愛が心を打ち、懐古的な視点から語られるストーリーは非常に印象深いです。
次に『うる星やつら ビューティフルドリーマー』(1984)。何度も見て新しい発見があるのが楽しいですね。
最後に『老人Z』。大友克洋の原作に基づき、AIと機械化が進む社会を描いています。ブラックユーモアが際立っていて、現代社会の問題を鋭く突いています。
~お話をお聞きして~
昭和の時代には、バリバリ働くビジネスマンとして経済の発展に貢献されてきた神さん。神さんが今回選んだ映画の共通点は、「恋」なのかなと感じました。
初恋の純粋さや、恋人との関係、そして夫婦の愛情などが隠れたテーマになっている3本を選んでくださいました。人間関係の中で、恋の感情を持った者同士の間に流れる空気感や、恋という感情の切なさをストーリー展開の中に落とし込んだ作品を選んでいると感じました。
神さんのおすすめ映画が、読者の新たな映画発見につながりますように。
(ここまでの執筆・構成:みねまる)
テーマ: 昭和のおじさんチョイス 執筆:神 靖志
タイトル: 野菊の如き君なりき
昭和初期の封建的な不合理に翻弄される青年と少女のものがたり。二人の純粋な姿に心を打たれる。二人は将来、結婚を望んでしていたが、少女が親の都合で他の男性と結婚させられて、最後は死んでしまうという悲劇。
自分自身ほんの少しの部分だが重なるところがあって、感情移入させられた。本編は老人の懐古から始まる。新人俳優の青年と少女、題名になった野菊の話のシーンでも、二人の会話はちょっとぎこちなく、多少臭いけど、それが、純粋さを強調するものとなっているのかもしれない。
60年以上前の映画で、白黒だが、それがまた哀愁を醸し出す。後に松田聖子の主演で「野菊の墓」でリメイクされているが、こちらの作品では松田聖子の愛らしさが目立った。
うる星やつら ビューティフルドリーマー
なんでもない日常が何回も繰り返されるという非現実的な展開で徐々にそれに気づいて行く人たちの心の様がコミカルにそしてシリアスに表現されていて関心する。
原作との乖離が大きく、自分の作品じゃないと高橋留美子が激怒したと噂される作品。実際は噂だけだったという落ちもあるが、繰り返される同じ場面でもわずかに異なっていたり、繰り返される中でたった一度だけ登場する人物がいるなど、そんな気付きにくい細かな仕掛けがちりばめられて、何回も見て発見してゆくのも楽しい。
TV版のうる星やつらとそれぞれのキャラクターや性格、ドタバタな感じは変わらないが、ストーリー性は全く違い、これは、完全に大人向けのアニメである。
老人Z
原作は大友克洋。奇想天外な展開で、息つく暇もないノンストップムービー。全体的にブラックでコミカルな展開だが、内容はAIや介護といった今の時代の問題を扱っているシリアスなストーリー。30年以上前の映画だが、現在にも通じる。
ストーリーは、老人介護用のAIロボットに、老人の亡くなった奥さんの知識が組込まれ、町中の車や炊飯器など様々なものと合体しながら巨大化してゆくというもの。
老人介護を隠れ蓑に戦争兵器として開発を進めている企業、それに立ち向かう少女のドタバタな絡みも面白い。
最終的には、その奥さんAIが老人の最後の望みを叶えようと開発企業と戦い、望みを叶えて終了となるが、最後の落ち(ネタばれになるので言わないが)は、結局は優秀なAIも人の心にはかなわなかったという愛情物語を描きたかったのかもしれないと思わせる。
昭和のおじさんチョイス〈執筆:神 靖志〉