2024年のエミー賞において、真田広之が演じる『Shogun/将軍』が18冠を達成した。これは、一長一短では成し遂げられない偉業だ。真田広之さんが、どのようにアメリカのドラマ界に進出し、関係者の信頼を勝ち取ってきたのか、その歴史を振り返える。
映画『ラストサムライ』に出演時のこだわり「侍を正しく描いてほしい」
2003年にトム・クルーズ主演映画『ラストサムライ』に出演した真田広之さんは、自身も時代劇に多数出演してきた経験から、「侍に対する正しい描写をしてほしい」という思いがあった。そのため、撮影時にも刀の使い方を助言したり、俳優の枠を超えて関わった。その結果、撮影終了後も監修として関わるように依頼された。
この経験が、真田さんのハリウッド進出の原点にあるのだと考える。実際、最近の『SHOUGUN 将軍』関連のインタビュー記事を読むと、日本の描写、特に時代劇の時代考証や風習、武士のあり方など、時代劇に俳優として関わってきた者として、正しく海外へ伝えて行きたいという信念があったと本人が述べている。
「誤解されているおかしな日本の描写を撤廃したい」と制作側に意見を伝えたきた真田さんの長年の努力が実り、『SHOGUN 将軍』でのプロデューサに就任につながっていく。
世界的に大ヒットしたドラマ『LOST』への出演で英語のセリフに挑戦
『ラストサムライ』の公開後、アメリカのエンタメ界に挑戦した真田さんは、2010年にJ・J・エイブラムス制作のドラマ『LOST』に出演した。
『LOST』は、2004年から2010年まで6シーズン続いた人気ドラマで、真田さんはファイナル・シーズンとなる第6シーズンの第1話から第5話までDogenという役柄で出演している。
当時私が読んだインタビュー記事では、「謎の役柄だから英語が話せなくても大丈夫です。と言われて引き受けたのですが、どんどん英語でのセリフを求められるようになり、焦りました」と語っていた記憶があり、謎のキャラクターから実態を伴った重要人物キャラにシフトチェンジしていった様子が伺える。
実際、私の奥な『LOST』ファンからしてみても、真田さんが演じていたDogenは、「何かやりそうな大物感」があるキャラクターであり、5話で終了するには惜しいキャラクターだと感じていた。『LOST』では、1話で終了するはずの役柄でも、印象の残し方によって役柄が拡張されることがあり、真田さんが演じたDogenもそういったキャラクターのひとつだったのでは?と推測している。
とにかく、ドラマの中では、日本の俳優真田広之ではなく、Dogenとして印象を残したことが重要だったのだ。日本の有名な俳優がゲスト出演したという話題性ではなく、アメリカで活動する一人の俳優として、人気ドラマに爪痕を残したことが大きな意味をもっていた。
『リベンジ』から『ウエストワールド』まで、ゲスト・準主役を経験
『LOST』終了後には、ゲスト出演から準主役まで幅広い作品に出演してきた真田広之さん。ドラマと並行して映画にも出演しているが、この記事ではドラマの出演作にフォーカスしていく。2024年『SHOGUN将軍』までの『LOST』を含めたドラマ出演作は計6本だ。
『リベンジ』(2011-2015)
ヒロインに冷徹な復讐を指南するサトシ・タケダ役(2011-2012)4話出演
ACB制作で日本でもヒットした復讐ドラマ。主人公エミリー・ソーンの復讐計画を助ける冷静なビジネスマン兼復習に必要な心得と武術を伝授する師匠役。シーズン2からは出演せず、ケイリー=ヒロユキ・タガワが出演。
配信 https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/revenge/28lirH60knqj
『エクスタント』(2014-2015)
ヒロインの雇用主ヤスモト・コーポレーションの経営社ヒデキ・ヤスモト役(2014)13話出演
CBS制作のハル・ベリー主演ドラマ。スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を務めたSFドラマで、主人公のモリーにアンドロイド開発の資金提供をする雇用主役。
『HELIX -黒い遺伝子-』(2014-2015)
北極の生物研究所ヒロシ・ハタケ博士役(2014-15)15話出演
SFスリラー『HELIX -黒い遺伝子-』では、北極の研究施設でウイルスのアウトブレイクと戦う科学者、ドクター・ヒロシ・ハタケ役。物語の重要人物で、シーズン1では主役級に出演シーンが多く、主演だと思っていましたが助演の立ち位置になるようだ。
『ザ・ラストシップ』(2014-2018)
元海上自衛隊護衛艦の艦長で現在は海賊のタケハヤ役。(2016)シーズン3に9話出演
ウイルスによって人類が壊滅の危機に瀕する中で、米海軍の駆逐艦乗組員たちが人類の存続を懸けて戦うアクションドラマ。第3シーズンに登場し日本を壊滅に追い込んだのはアメリカの仕業と誤解し、主人公たちが乗る駆逐艦ネイサン・ジェイムスを奇襲する海賊役でシーズン3を盛り上げた。
『ウエストワールド』(2018-2022)
ウエストワールド
ウエストワールドに併設するテーマパーク「ショーグンワールド」の剣士ムサシ役(2018-2022)シーズン2から3に4話出演。
HBO制作のSFミステリー。AIを搭載されたアンドロイドが高額の入場料を支払った来場者に好き勝手されるテーマパークが存在する世界のストーリー。西部劇のシチュエーションは「ウエストワールド」、日本の武士の世の中の世界は「ショーグンワールド」になっている。
テーマパーク「将軍ワールド」の住人であり、武士として誇を持ち生きるアンドロイドムサシで、武士道や侍の佇まいを見せ迫力があった。
このドラマでも、真田さんは時代考証に貢献し、ショーグンワールドにやってきた主人公のメイブ(タンディ・ニュートン)が日本語の台詞を話すシーンの撮影に参加して指導を行っている。
『SHOGUN将軍』までの道のり
2010年に『LOST』に出演してからアメリカのドラマや映画に挑戦し続けてきた真田広之さんのエンタメ界への貢献度は非常に高い。『SHOGUN 将軍』は、ドラマとしても素晴らしいクオリティの作品ではあるが、このクオリティを実現できたのは、真田さんが言葉の壁、人種の壁、文化の違いの壁などいくつものハードルを超え、アメリカのスタッフや関係者と信頼関係を構築してきたからこその18冠という偉業が達成されたのだ。
アメリカのドラマを約30年見てきたという日本ではニッチな部類にはいる自分だが、第76回エミー賞は、日本に暮らすアメリカドラマのファンとして、とても誇らしい気持ちなる日だった。日本の俳優がプロデューサーとなり、主演し、日本からプロのスタッフを集めて、日本の時代劇のノウハウを駆使し制作したアメリカのドラマが『SHOUGUN将軍』である。
日本人俳優としてはじめてエミー賞主演男優賞を受賞した真田広之さんが導いた史上最多の18冠、心から「おめでとうございます!」と伝えたい。
『SHOGUN将軍』(2024-)
戦国時代の日本を動かく武士、吉井虎永役。全10話出演
ジェームズ・クラベルのベストセラー小説を原作とした歴史ドラマ。1980人にはミニシリーズとてい制作されており、日本からは三船敏郎、島田陽子などが出演した。2024年にリメイク版では、真田広之が主人公の虎永を演じえいる。戦国時代の日本を舞台に、嵐により日本の海岸に漂着したイギリス人航海士ジョンが、時代を動かす武士たちの命をかけた闘争に巻き込まれていく。
配信 https://disneyplus.disney.co.jp/program/shogun
第76回エミー賞
2024年9月16日(月)U-NEXTにて独占ライブ配信
(C) Television Academy.